−−撮影監督は「アレックス」のベノワ・デビエですね。一緒に仕事をしていかがでしたか。
彼と組んだのは、撮影で実験をしたかったからだ。照明を使わずに、自然光を使ったのだ。太陽光や月の光、蛍光灯、街灯など。わたしは、この10年で最も美しいと思われる映画「花様年華IN THE MOOD FOR LOVE」の撮影に打ちのめされてしまった。そこで、その映画の2人の撮影監督のうちのひとりであるリー・ピンビンを探したが、なかなか連絡が付かなかった。そこで、「ヴォーダンの獣」の撮影監督ダン・ローストセンとも連絡を取った。彼も少なくとも部分的には自然光を使っていたからだ。そして最後に「アレックス」の監督、ギャスパー・ノエにパリで会い、彼がベノワ・デビエと連絡を取るように勧めてくれたのだ。彼は、ベルギー人でわたしが心に描いていたような撮影をする人物だった。ベルギーは、ハリウッドに比べれば映画制作に対する予算が非常に少ない国だ。だからこそ、自然光で撮ることがうまいのだろう。例えば、ダーデンヌ兄弟が良い例だ。ベルギー人は光の指導者のようだ。彼らは光をできる限り自然にしておこうとする。そのため、全般的に日常の風景が得られる。正直にいえば、撮影で譲歩しなければならなかったのは、いくつかのシーンを照らすために木製の街灯を8つ作ったことだけだ。