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La Chiesa
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1988 Color |
監督:ミケーレ・ソアビ 撮影地:ハンガリー・ブダペスト 公開日:日本1990年8月、米国1991年1月30日(ビデオリリース) |
ガス神父:ヒュー・クワルシー |
西暦1150年、中世の北イタリア。老修道僧が騎士団をとある洞窟に案内する。そこは疫病にかかり、足の裏に印した十字架で神を踏みにじる邪教の信者が身を寄せあっていた。悪魔に身も心も捧げた者達に騎士団が襲いかかった。殺戮の限りが尽くされる。死体は大きな穴に葬られ十字架が置かれた。 修道僧は叫ぶ。この地に聖堂を建て永久に悪魔を地の底に封し込めよ、と。虐殺の全てを見た少女が逃げる。しかし彼女の前にも騎士が立ちはだかった。 現代。大聖堂は変わらずその地にあった。中は悪魔を描いた絵画にあふれ、芸術的にも高い評価を得ていた。見るものはそれを象徴的表現とみなしていたが、絵画は呪われた事実を写しとったものだった。この大聖堂の蔵書目録を作るために新任の司書エバンがやってきた。初出勤の日がら遅刻した彼は老司教ににらまれながら、2人の女性と知り合う。1人は絵画を中心に聖堂の修復を行うリサ、もう1人は図書室で遊び、幻の馬の足音を聴く不思議な少女・教会番人の娘ロッテだつた。 リサは地下室を掘っていた作業員に呼ばれて降りていく。彼女は地下室の下に巨大な空洞のあることを知り、作業を中止させた。振動による被害を調べるリサは壁に亀裂を早つけ、岩のひとつを押すとそこに穴が開いた。彼女は穴の中から古い羊皮紙を発見する。彼女はそれをエパンに見せる。好奇心を持ったエパンは司教に内緒で古文書を読みとろうと決めた。 夜、リサを送るエパンは羊皮紙がらチユートン騎士団の印を発見したと報告する。それは十字軍のころに組織された騎士団で残虐な行為で知られていたという。同じころ、司教は食事に遅れてきた黒人神父ガスをしかっていた。またロッテは地下室から排水口を抜け、町にくり出していた。 次の日の夜、エパンは1人で地下室に降りた。彼は目指すものを発見した。それは床に埋められた十字架中央に位置する悪魔の像だった。彼がその石をはずすと、ぽっかりと空洞が口を開けた。彼はそこに手を入れ、古い袋を発見した。それを開けると何本もの手が伸び出した。エパンは幻想がら目覚める。だが左手に深い傷ができていた。その場に夜遊びに出たロッテを追ってきた番人の父親がくる。エパンは発見されそうになったため番人を殴り倒した。 翌日。リサはエパンに前夜のできごとを伝えるが、彼はキスしたいといってリサに襲いががった。彼女は部屋を逃け出した。ロッテが図書室にやってくる。エパンは、”6”(悪魔の数字)をくり返しタイプするばかり。お腹が痛くて学校を休んだというロッテに突然エパンは難クセをつけ始める。自室に逃げ帰つたロッテの前に父親が立ちはだかる。彼は娘をウソつきと罵倒し、娘の口を石ケンで洗い始めた。ロッテが見上げた鏡に映るのは怪物に変つた父の姿。ロッテは悲鳴を上げた。 聖堂内にはCMの撮影隊、ロックとパイクが好きなカップル、女性教師に引率された小学生たち、老夫妻などがいた。その中をロッテの父親が駆け抜ける。彼は悪魔に取りつがれたとガス神父に懺悔した後、地下室に逃げ込んだのだ。神父が追ったが、番人は掘削用ドリルを胸につき刺し果てていた。ドリルを使った振動により、地下深くのメカニズムが動き出し、聖堂の唯一の扉がピタリと閉じられた。とじ込められた人たちに不安が広がる。しかもロッテの父親にひっかかれた人達がなぞの疫病に倒れ始めた。 ガス神父は司教に食いさがっていた。司教はついに語り始める。聖堂は悪魔を封じ込めるために作られたことを。建築家は悪魔が復活したとき、扉を締めて、敵を教会内に閉じ込めるように設計した。さらに一瞬にして聖堂を崩壊させ、悪魔と疫病が外に広がらないようにした。司教は自壊システムの地図を持っていたが、全ては神の覚しめしといって古文害を破り捨て、自身は塔から身を投じた。 人々はそれそれの方法で脱出を図るが全ては悲惨な結果に終わった。リサはエパンを従えた悪魔に犯されていた。 司教が破り捨てた文書をガス神父が貼り合わせているところに街で遊んできたロッテが戻ってくる。聖堂内の惨状を感知したロッテは幻想に襲われる。彼女は850年前のできごとを見た少女の生まれかわりだったのだ。ロッテは幻覚の中で見た建築家の最期を神父に話す。自壊システムの鍵は聖堂内の唯一の墓である建築家のそれにあると知った神父はロッテを逃がし、墓をあばいた。 |
ミケーレ・ソアビはダリオ・アルジェントの助監督だけでなく、ジョー・ダマトの助監督も経験している。ソアビはダマトについて以下のように語る。 ソアビがフルチと初めて会ったのは助監督としてではなく、役者としてだった。フルチはアメリカ映画に似せた映画を撮ろうとしていたため、ちょうど髪や目などの外見がアメリカ人のようなソアビがキャスティングされたのだった。5日間の仕事の予定だったが撮影が遅れたため、ソアビは何もする事がないまま3週間ほどロケ地に滞在しなければならなかった。そこでソアビは制作主任とフルチにスタッフとやりたいと申し出た。フルチには役者がそんなことを言い出すとは意外に思えたらしい。フルチは快諾し、ソアビは1日30ドルで制作助手をすることになった。 20世紀末のイタリアのホラー映画界で、登場した新人はソアビのみである。ソアビは「僕の地位は、簡単に得られるものではない。今日のイタリア人作家は、1970年代と比較して語るべき所がほとんどない。怠惰で退屈な状況だ」と語り、「それは今日の裕福さに起因している。昔に比べて物語は力強さがなく、面白みに欠ける」と説明する。裕福さによるこの病から抜け出すため、ソアビは20日間テレビカメラを持って弾が飛び交うブカレストまで行ったこともある。帰って来た時は「別人のようになっていた」そうだ。 |
デモンズ3は、当初、飛んでいる飛行機の乗客のなかに伝染病が広がっていくといった内容のストーリーが想定されていた。だが、アルジェントらは、観客が続編ものに飽きているうえ、飛行機の話はありきたりだと考え、別のタイプの話に切り替えた。 |
『デモンズ3』では、特にアーシア・アルジェントが演じた役でロマンス主義的な要素が見られる。ソアビは「しなやかな糸のようなものがある。なぜなら、そのような物の後の方が、スクリーン上で起こる恐ろしい事件が、観客に対してより大きな効果を発揮するからだ」と説明する。 |
ソアビの監督デビュー作の『アクエリアス』では検閲で何カ所かカットされた。『デモンズ3』は『教会』という原題のために18歳未満入場禁止にされた。ホラー映画を作っているというだけの理由で、特定の監督は検閲に出くわす。その一方で、例えば、デビット・リンチの『ワイルド・アット・ハート』の様な映画は、暴力的であるにも関わらず一般向け映画として通用する。こうした出来事は差別的とも思える。だが、ソアビは「そのとおりだが、残念ながら他に選ぶ道は無さそうだ」と諦めている。 |
各映画ガイドにおける作品紹介を比較する。短いコメント文でも、筆者の見解が分かれるのは興味深い。 ホラーの逆襲の紹介文 アルジエントは製作と脚本のみ。監督はミケーレ・ソアビ。教会地下の魔の封印が解かれ、悪魔が復活する。アルジェント&ソアビは”宗教シリーズ”として邪教の宗派をテーマにした『デモンズ4』(90年〕で再ぴコンビを組んでいる。 ホラー&ファンタスティック映画(スクリーン特編版)の紹介文 原題、英題ともデモンズの言葉をはずし、監督もバーヴァからアルジェントの一番弟子ソアヴィに代えた点からも「3」とはいいにくい作品。とはいえ、コンセプトは閉鎖空間を作り、そこにデーモンたちが襲いかかるわけでこの点は「デモンズ」同様。中世に悪魔崇拝者を虐殺、その上に大聖堂が建てられた。それから850年、功名心にもえた図書館司書によって悪魔の封印が破られ、聖堂は恐怖の空間と化す。「デモンズ」1、2と異なるのは因縁をしっかり描き、甦った悪魔を現実とも幻想ともあいまいにしていること。際物的描写もあるものの、SFXの暴走にたよることなくソアヴィは自身が好む古典的恐怖映画のムーディな作りを堅持する。物語はやや混乱するが、ソアヴィの志を見たい作品。「2」にも出演したアルジェントの娘アーシアが不思議な雰囲気を出している。注目したい。 |
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