LA TERZA MADRE
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監督:ダリオ・アルジェント |
サラ・マンディ:アーシア・アルジェント |
フィルムネガフォーマット: 35 mm |
ヴィテルボの墓地で、古いひつぎが発掘された。発掘に携わった枢機卿のブルスカは、その主が伝説上の人物オスカル・デラバレーのものであると知り、一緒に埋めてあった箱を車で持ち帰った。ブルスカは箱を封印し、友人の博物館館長マイケル・ピアースに、一部始終を書き添えてその箱を送った。 ローマ。博物館ではマイケルの助手で美術品修復を担当するサラ・マンディと同僚のジゼルが働いていた。送られてきた箱を見つけたジゼルは、サラを誘い、内証で箱を開けてしまう。箱には三体の偶像と、剣、緋色の衣が納められていた。サラが資料を取りにその場を離れると、どこからかサルが現れ、ジゼルを威嚇。ジゼルは飛び掛かってきた3体の魔物に内臓をえぐられて殺される。戻ってきたサラは殺されたジゼルを見て、その場から逃げようとするが、サルが追ってきた。絶体絶命と思われたとき、サラの頭の中に女性の声が響き、何者かが見えない力で扉を開き、逃げ道を作った。 博物館を出たサラは警察に通報する。エンゾ・マルキ警視は、サラの訴えをまともに受け止める気にはならなかったが、容疑者としてサラを尾行するように部下に命じた。 マイケルは、前妻との間に設けた幼い息子ポールと暮らしていた。マイケルがブルスカを訪ねると、ブルスカは意識不明状態に陥っていた。ひつぎを発掘したあとのブルスカは、人が変わってしまい、意味の無いことを口走っていた。黒魔術を行う三母神の一人マーテル・ラクリマルムが目覚め、世界を崩壊に導くというのだ。箱の中身はマーテル・ラクリマルムの力を強める働きをするものだという。しかし、それらの実物はジゼル殺害事件の後、何者かに持ち去られていた。 伝説によると約 200 年前にオスカル・デラバレーが生きていた時代にも、終末的な現象が多発し、人々が恐怖におののき、死んでいった。その時の終末的な恐怖がまた再現されるのだという。実際、ローマにはその兆しが現れており、人々が狂い出していた。一方、世界中からローマに魔女が集結し始めていた。 そんななか、マイケルの息子ポールがさらわれた。息子のベッドの枕元には奇妙なシンボルが書かれていた。それを見たサラは、箱に刻まれていた文字と同じだと気付く。取り乱したマイケルに、サラは急いで警察に捜査を依頼しようと勧めるが、マイケルは、誘拐は魔女の仕業であり、警察に行っても狂人扱いされると主張した。息子を取り戻すためには、オカルトの権威として有名なヨハネス神父に相談に行くしかないと言って家を出た。 ローマに残ったサラが、図書館でオカルトについて調べていると、マイケルから助けを求める電話がかかってくる。サラは、彼を追おうとテルミニ駅に向かい、そこで魔女の一団に遭遇する。黒装束のリーダー格で、日本語を話す魔女カテリーナがサラの気配に振り向く。カテリーナの下僕シモーネを振り切ったサラは、本屋に逃げ込む。エンゾ率いる捜査官たちもまた、サラを追ってきていた。本屋の中でサラはエンゾに見つかりそうになるが、また頭の中に声が聞こえてきた。サラが意識を集中すると、不思議な力が働いて警察の目から姿を消すことができた。電車に乗り込んだサラを捜査官とカテリーナが追う。カテリーナは捜査官を殺害、トイレに隠れていたサラを発見するが、サラに反撃され、頭を打ち砕かれる。 テルミニ駅で刑事達をまいたサラは、ヨハネス神父を訪ねた。先に来ているはずのマイケルはおらず、サラの母親エリザの生徒だったというマルタと出会う。エリザが教えていたバレエ学校は、暗黒の三母神のひとりマーテル・サスペリオルムの住む館で、裏で黒魔術を行っていた。対抗する白魔術師だった母は、マーテル・サスペリオルムと闘って破れ、殺された。父もまた殺されていた。両親の死因は交通事故と聞かされていたサラは意外な事実を知りショックを受ける。 そこに興奮気味のヨハネス神父が現れる。ヨハネスはドイツ時代に懇意にしていたエリザの娘サラに会えた事を喜んだ。そして、三母神について語り出した。三姉妹として生まれた彼女たちは、母といっても生命を生み育てない。フライブルグにマーテル・サスピリオルム、ニューヨークにマーテル・テネブラルムが住んでいたが、かなり前に死んだ。マーテル・サスペリオルムはアメリカから来たバレリーナ、スージー・バニオンによって倒されたが、エリザはその前に殺されていたのだった。 三母神の中で唯一生き残ったマーテル・ラクリマルムは最も若くて美しく、最も恐ろしい。その魔女がいまや力を強め、ローマを崩壊へと導いている。その影響により、あるものは殺し合い、あるものは狂気に陥る。事実、ヨハネスの教会には、悪魔に取り付かれた人々が続々と運び込まれてきていた。 世話役のバレリアが魔物に取り付かれ、自分の娘をキッチンで惨殺し、ヨハネスにも襲い掛かってきた。バレリアはヨハネスを殺した後、自害した。サラとマルタは惨劇の現場から逃げ出す。マルタの車で二人はローマに戻る。家に帰ろうとしたサラだったが、何者かがアパートに侵入していた。サラはマルタの家に駆けつけ、助けを求めた。 マルタの家には、彼女の若い同性の恋人エルガがいた。マルタはサラに一晩部屋を貸すことにした。マルタは呪文を唱え、暗がりにファンデーションの粉を吹きつけて、そこに幽霊を映し出して見せた。サラも同じようにしてみると、エリザの姿が現れた。まぎれもなく駅で助けてくれた母だった。 その夜、マルタとエルガは激しく愛し合う。一方、サラは魔物に襲われる悪夢にうなされた。廊下を見ると、博物館で追ってきたあのサルがいた。サラは急いでマルタの家を逃げ出す。サラは家の前の公衆電話からマルタに電話をかけるが、エルガとマルタは魔女の下僕により、虐殺されてしまう。逃げるサラは、行方不明になっていたマイケルと再会する。サラがマイケルの襟元から血が流れていることに気付くと、マイケルの表情ががらりと変わった。狂気にかられたマイケルはサラに襲い掛かる。サラはマイケルの体に火をつけて逃げる。追ってくるマイケルに霊体のエリザが飛び掛かり、サラを助ける。だが、エリザはマイケルとともに、炎に包まれながら消えていった。 サラはマルタに紹介してもらう約束だった錬金術研究の大家、グリエルモを訪ねる。彼は三母神のために家を建てたという建築家ヴァレリが建てた家に住んでいた。サラが連続殺人の容疑者だとニュースで知っていたグリエルモは、助手の青年とともにしびれ薬を吹き付けて彼女の動きを封じたが、サラが殺人犯でないことがわかると、グリエルモはサラのしびれを解いた。グリエルモの家でサラはヴァレリの残した本を読む。現在の状況から逃れるためにはマーテル・サスピリオルムと闘って勝つしかない。そうしなければ、自分だけでなく、ローマが崩壊し、やがては世界が破滅してしまう。そのためには、ローマにあるマーテル・サスピリオルムの隠れ家を見つける必要がある。 グリエルモの家をあとにしたサラは、夜のローマをタクシーで街を流していた。街はいたるところで争いがおこり、荒廃の度を増していた。そんななか、以前テルミニ駅であった魔女の集団を見つけた。サラはタクシーを降り、一団を追うと、廃虚と化した館にたどりついた。その館こそ、マーテル・ラクリマルムのすみかだった。 サラは館に足を踏み入れる。物陰に隠れていたエンゾが引き寄せた。館の中には、銃を持った魔女の下僕がいて、サラを探し回っていた。サラとエンゾは、謎のシンボルが描かれた壁の柱を見つける。壁の向こうに秘密の通路を発見したふたりは、通路の奥に進むが、エンゾは下僕たちに捕まってしまう。 一方、ハンガリー語を話すふたりの魔女から逃れるため、姿を隠す術を使って体力を消耗したサラは、館の中にあるカタコンベをさまよう。そこではおぞましい儀式が繰り広げられていた。地下の大広間に出たサラは、サルに見つかってしまい、魔女たちの足元に倒れこむ。エンゾも岩肌につるされてしまう。 マーテル・ラクリマルムが中央に立ち、緋色の衣をまとっている。「 3000 年この時を待っていた。ついに私達の時代が来る」。マーテル・ラクリマルムが誇らしげに拳を振り上げると、魔女たちの熱狂は頂点に達した。サラは力を振り絞り、近くにあったやりをつかむと、マーテル・ラクリマルムの緋色の衣を剥いで、火にくべた。衣は燃え上がる。呪物を失ったことで、マーテル・ラクリマルムは突然うろたえはじめた。地震が起こり、魔女たちは逃げ惑い、崩落した壁に押しつぶされて死んでいく。マーテル・ラクリマルムも崩れ落ちてきた尖塔の先端に腹部を刺し貫かれ、息絶える。 広間を後にし、サラはカタコンベから地上への出口を求めてさまよう。エンゾも修羅場からなんとか逃れてきた。地震で地割れした場所から地表に出ると、地上は静まり返り、平穏な夜明けを迎えていた。ふたりは大笑いし、お互いの無事を喜びあうのだった。 |
魔法使いのサマンサが主人公のコメディドラマ『奥さまは魔女』やアニメの魔法少女ものに慣れ親しんできた日本人にとって、魔女は決して恐ろしい存在ではない。むしろ親しむべきキャラクターなのではないだろうか。 |
このように、魔女をテーマにしたイタリアン・ホラーは時おり作られているが、数ある魔女もののホラー映画の中で、最も有名なのは、ダリオ・アルジェント監督の魔女三部作であるといっても差し支えないだろう。 |
『サスペリア』の成功の後、アルジェントは次回作の脚本で悩み、なかなか脚本が書けなかった。苦悩するアルジェントにヒントを与えたのはやはりダリア・ニコロディだった。ニコロディはマーテル・テネブラルムのストーリーをアルジェントに示し、ここで初めて魔女三部作という発想が生まれた。 |
そのためなのか、ルイジ・コッツィ脚本・監督による『デモンズ6/最終戦争』(90・未)というダリオ・アルジェントの魔女もののパロディともいえる作品も作られている。トマス・ド・クインシーの「深き淵よりの嘆息」にはレヴァナというローマの女神が登場するが、この映画にもレヴァナという魔女が出てくる。脚本にはダリア・ニコロディも協力したが、出来上がった映画は魔女ものの三作目と名乗るには程遠いものである。魔女はひたすら汚く描かれており、コッツイ監督自身が「三人の魔女の物語は、この映画の素材に用いただけだ」と語り、アルジェント作品と関連付けされたり、比較されたりするのを避けるようにしているのもうなずける。 |
『サスペリア・テルザ/最後の魔女』がイタリアで公開された直後の2007年11月6日の午後。ローマの郊外の閑静な地域にあるアルジェントの自宅のベルを鳴らした。(聞き手=矢澤利弘) 諸般の事情によりウェブサイト上では一部、不掲載とさせていただいております。インタビュー全文は管理人稿の出版物をご参照ください。 ――確かに、あなたの映画は純粋なホラーというよりも犯人捜しを主軸とするサスペンスのカテゴリーに属する作品が大半で、超自然的な世界を描いた作品はむしろ例外的です。あなたがホラーというジャンルから離れていたのはどのような理由があったのでしょうか。 ――超自然的な世界を描いた作品といえば、お父さんでプロデューサーのサルバトーレ・アルジェントとあなたが一緒に仕事をしていた頃の映画のタッチを思い出しますね。 ――『サスペリア・テルザ/最後の魔女』の脚本は、あなたの映画の常連脚本家フランコ・フェリーニが参加しておらず、その代わり、トビー・フーパー監督の『ツールボックス・マーダー』を手掛けたアメリカ人の脚本家コンビ、ジェイス・アンダーソンとアダム・ギーラッシュが参加しています。脚本はどのようにして生まれたのでしょうか。彼らとのコラボレーションはうまくいきましたか。 ――『サスペリア』と『インフェルノ』は人工的な色彩設計が印象的な作品でした。テクニカラーの三原色を調整したり、まるで舞台のような色彩の照明を使用したりすることによってファンタジックな世界を表現していました。それに比較して『La Terza Madre』の色彩は非常に現実的です。今回の映画ではどのような意図で映画の色彩設計を行ったのでしょうか。 ――あなたの映画では、今まで有名な場所がロケ地として使われてきませんでした。ローマを舞台にした作品でも、有名な観光地がスクリーン上に登場することは少なかったように思います。それに対して、『La Terza Madre』では、テルミニ駅やサンタンジェロ城、コロッセオといった有名な観光地が描かれています。『サスペリア』や『インフェルノ』では魔女の住む館が物語の中心にありましたが、『サスペリア・テルザ/最後の魔女』は建物よりもローマという町全体の恐怖を描いています。これはなぜでしょうか。 ――『サスペリア・テルザ/最後の魔女』の館は実在するのですか、それともセットですか。また、『サスペリア』や『インフェルノ』ではどうだったのでしょうか。 ――次にキャスティングについてお聞きしたいと思います。まず目をひくのは、主人公であなたの娘のアーシア・アルジェントと、彼女の母親で、あなたと長年のパートナーだったダリア・ニコロディが映画でもアーシアの母親という役で出演しています。これは何かを狙ったものなのでしょうか。 ――三人の魔女のなかで最も美しいという魔女のマーテル・ラクリマルムですが、彼女の役のモラン・アティアスはどうやって選んだのですか。『インフェルノ』では、アニア・ピエロニがマーテル・ラクリマルムを演じていましたね。 ――『サスペリア・テルザ/最後の魔女』には、モラン・アティアスを始め、女性のヌードがたくさん出てきますが、あなたの過去の作品では女性の裸のシーンはそんなに多くなかったように思います。ヌードに対する考え方の変化があったのでしょうか。 ――魔女の一人としてカテリーナという日本語を話す魔女が登場します。日本人の市川純さんをキャスティングしたのはなぜですか。 ――あなたは自分の見た悪夢をよく映画に取り入れることがあると聞いています。この映画では悪夢に影響を受けたシーンはあるのですか。 ――『オペラ座の怪人』以降、久しぶりにアーシア・アルジェントがあなたの映画で主人公を演じています。最初からキャスティングには彼女を考えていたのですか。 ――アーシア・アルジェントも『スカーレット・ディーバ』では監督をしたり、脚本を書いたりしていますね。今回の作品に対しては、彼女も意見を言ったりしたのですか。アーシアもここ数年で成長したと思いますが、以前と比べて変わったと思えることはありますか。 ――アーシア・アルジェントと刑事が笑いあうシーンで映画が終わりますが、どのように解釈すればよいのでしょうか。 ――音楽について、この映画ではあなたのいつもの作品のように電子的な音ではなく、クラシカルな曲が使われています。これはどのような効果を狙ったものなのでしょうか。 ――映画のオープニングは非常にスリリングですね。 ――黒皮の手袋をはめた殺人者の手をあなたが自ら演じるのがあなたの映画のトレードマークの一つとなっています。今回はやっていないのですか。 |
2007年11月7日午後2時。クラウディオ・シモネッティはさっそうと待ち合わせの場所に現れた。 ――『サスペリア・テルザ/最後の魔女』は典型的な映画音楽になっていますね。ボーカルやコーラスがふんだんに取り入れられていますが、どのような意図があったのでしょうか。また、新しい楽器は使いましたか。 ――参考にした曲やインスピレーションを受けた曲は何かありますか。 ――映画『サスペリア・テルザ/最後の魔女』の感想はいかがでしたか。曲作りに際してアルジェントからの注文はありましたか。 ――前作の『デス・サイト』は打ち込みの曲で、今回の『サスペリア・テルザ/最後の魔女』とはかなり異なった曲調ですね。 ――曲を作り始めたのはいつからですか。 ――作曲のスタイルはいつもどのようにされていらっしゃるのでしょうか。 ――どのシーンに付けた曲が気に入っていますか。 ――『愛しのジェニファー』や『愛と欲望の毛皮』などのアメリカのTV映画の音楽も担当していますね。 ――ダリオ・アルジェント作品とその他の映画監督の作品との違いはどんなところでしょうか。 ――普段はどのような曲を聴きますか。 ――今やっている仕事はどのようなものでしょうか。また、これからやってみたいことはありますか。 ――他のゴブリンのメンバーが集まって、CDを出しましたが、どう思われますか。ゴブリンが再度結成されることはないのでしょうか。 ――日本人にあなたの曲が人気のある理由はわかりますか。 ――『プロフォンド・ロッソ』のミュージカルが上演されていますね。 |
市川純さんとは2007年11月7日午後5時にローマのテルミニ駅で待ち合わせをし、近くの市川さんの自宅でインタビューを行った。市川さんは映画の怖い魔女のイメージとはかなり異なる可憐な女優だった。 ――『サスペリア・テルザ/最後の魔女』に出演したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。 ――何か印象に残るエピソードはありますか。 ――アーシア・アルジェントについてはどう思われましたか。 ――他のダリオ・アルジェントの作品についてはどう思いますか。 |
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