投稿者 NT 日時 1998 年 1 月 10 日 18:28:13:
私が見聞きした範囲内で書きます。推測も一部含みます。もし誤り等あればどなたかご指摘下さい。
アルジェントの”Opera”の米国や日本での配給権は米国Orion(オライオン)社が握り、カット版(以後、Orion版)はOrionにより編集された物です。日本で販売されたビデオもOrion版です。日本で出たLDについては、私自身LDは全く所有してませんので確認できませんがやはりOrion版であると思います。通常、米国公開においてはアルジェントの映画はMPAAの圧力により配給会社が残虐シーンをカットしてしまう場合が多いのですが(例えば、「シャドー」の腕切断シーン)、Orion版ではめずらしく残虐シーンが全くカットされませんでした。
アルジェント本人の見解によると、「Orion社はラストシーンとその他場面を、退屈で不要であると見なしカットしたのだろう」とのことです。アルジェントは「あのラストシーンは自分には重要な場面だったのに...。やつらは偽善者で金のことしか興味ないんだ」と嘆きました。
Orion版は”Terror at the Opera”と改題されました。Internet Movie Datebaseによるとアルジェントの”Opera”以前に同名タイトルの作品は存在しないようなので、この改題は題名の重複を回避するためではなかったようです。米国で公開されたアルジェントの映画は度々改題され、”Tenebrae”→”Unsane”、 ”Phenomena”→”Creepers”ですから、米国の映画興行者はキワモノ的題名の方が集客効果ありと考えているようです。
日本での劇場公開がOrion経由で行われたことによる唯一の利点といえば、これもOrion配給のロメロ監督作「モンキー・シャイン」と二本立てとなったことぐらいでしょう。もう10年前の話ですが、今から見ればかなり豪華な取り合わせです。
なお、ものの本によりますと同様の例としてM.バーバの「血塗られた墓標」の日本公開は米国AIP社によりなされたため、カットされなおかつ音楽まで差し替えられたそうです。この映画のアメリカ版ビデオには、オリジナルの音楽を収録しているということが宣伝されています。
以上の例から考えますと、我々観客側からすればイタリア映画の日本公開は米国経由ではなく、やはりイタリア本国から直輸入の方が望ましい場合が多いと思います。”Terror at the Opera”ではなく”Opera”の方が配給されていれば、日本におけるこの映画の批評も多少は好意的なものになっていたのではないでしょうか。