投稿者 ユーベ 日時 1998 年 1 月 14 日 01:39:59:
回答先: Re: 初めて「オペラ」を見た時。 投稿者 NT 日時 1998 年 1 月 13 日 19:39:51:
「オペラ座/血の喝采」を初めて見たのは、レンタルビデオでなんですけど
当時(5年くらい前かな?)見てたホラー映画といえばトビー・フーパーの映
画やダン・オバノン、ジョージ・A・ロメロ、スチュアート・ゴードンといった具合
なので、少女のまぶたを裂かんとする針と、その前で展開されるあまりに残
酷な殺人光景に興奮したものです。「オペラ‥」は、その押しの強い展開
と、静と動のあまりにはっきりしたコントラストが印象的で、ダリオらしさと、
ランベルト・バーヴァの映画で見せた衝撃度を重視した映像効果が相俟っ
て、不思議な感じの映画だと、その当時思いました。独特の映像はそれま
で以上に冴えており、狂気すら感じます。音楽に関しても同様。ブライアン・
イーノや、元ローリング・ストーンズの動かんベーシスト ビル・ワイマンといっ
たベテランから、めちゃくちゃマニアックなヘヴィメタルバンド Norden Light
の“No Escape”で締めくくる世紀末サウンドが爆発していて、ヴェルディや
プッチーニのオペラが影を潜めてます(ヴェルディゆかりの劇場テアトル・レ
ジオでせっかく撮ったのに‥)。当時、個人的にはそれでよかったんですが、
後にダリオ・アルジェントの映像美の世界にはまった時、イタリアン・ホラー
(マリオ・バーヴァから引き継がれたもの。フルチやヤコペッティのやつでは
断じてない。)の崇高さが損なわれているように感じました。ダリオ・アルジェ
ントはこの映画以降、スランプに陥ったのか(娘をやたらと使いだしたのも
その要因?)、かつての演出のキレが見られなくなってるように思います。
やはり「サスペリア」前後の70年代あたりで才能は枯渇してしまったんでし
ょうか。確かにトラウマやスタンダール・シンドロームといった心理面を強調
するテーマに取り組むんではいますが、どうも内面まで抉れずに、見た目の
狂気と、そこまでしなくてもと言ってしまいそうな特撮が前面に出てるだけだ
と思わずにはいられません。「サスペリア」の頃の色彩を出せとは言いませ
んが、鮮血の美学と研ぎ澄まされた演出をもう一度甦らせて欲しいです。
(いつのまにやらアルジェント論になってた‥。)