投稿者 金光俊彦 日時 1998 年 1 月 14 日 20:49:11:
豪華絢爛のわりに、このフォーラム以外ではあまり評価の芳しくない『オペラ』ですが、個人的には『スタンダール・シンドローム』と並んで映画史に残る傑作だと思います。
感受性のない馬鹿な(!!)評論家たちはその内面の奥深さや、なんでもないように見えるけれどもよく考えられて撮られているシーンをひとつたりとも触れようとはしません。
ただの“犯人探し映画”としての脚本の甘さだけ攻めようとします。その脚本(特にカットバックとリズム)があって全編ワンシーンのようなまとまった映像が生み出されると思うのですが。
アルジェント監督はどんなシーンにおいても台詞に頼らず人物の心理描写をします。役者に自然な日常会話をさせておき、カメラは役者を一歩ひいた所から周りの空間をフレームに入れ、カットが長短しても常に一貫したリズムで撮り続けます。そして不安、苦悩、恐怖、やさしさを感じさせてくれます。
例えばベティと舞台係を見おろすショット、犯人がモニターに写るベティにナイフをあてるシーン、烏のいる楽屋に犯人が忍び込むシーン、血まみれのネックレスを水で洗い流すシーン、そして、たぶん、まだ見たことがないラストシーン…。
『オペラ』には純粋に映画的なシーンが山ほど散りばめられていると思います。もし音を消して鑑賞したとしても十分に説得力のある映像に仕上がっていると思います。
私にとって『オペラ』『スタンダール・シンドローム』はブニュエルやベルイマンを見るのと同じくらい内容のある作品だと思います。
ぜひみんなでメーカーさんに『オペラ』完全版ビデオ、LD、DVDを発売してもらえるよう、リクエストしましょう。
そして『トラウマ』のシネスコ版、『スタンダール・シンドローム』のイタリア語版、『初期三部作LD-BOX』など、廃盤になっている作品を完全な形でどんどん再発してもらいましょう!