M.D.C.-Maschera di Cera
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1997 Color
監督:セルジオ・スティバレッティ 録音:ドルビー フィルム長:2748メートル |
ボルコフ:ロベール・オッセン |
1900年12月31日、パリ。新年を迎える花火が打ち上げられるなか、ある夫婦が金属の腕を持った男によって惨殺される。この猟奇殺人の唯一の目撃者はたった一人生き残った彼らの娘のソニアだった。 ソニアは、この付近で多発する、謎の液体を注射された被害者が麻痺状態で発見されるという謎の事件を取材中のジャーナリスト、アンドレアと出会い、恋に落ちる。ソニアはヴォルコフの下で働くうちに、彼に不信感を抱くようになった。彼の取材に同行するうちに、偶然ソニアは両親の死に関する恐ろしい事実を発見する。ボリスはさらった人々の身体を使って蝋人形を作っていたのだ。彼女に魔の手が迫る。 |
この作品は当初、ルチオ・フルチ監督、ダリオ・アルジェント製作というかたちで企画されていた。しかし、1996年3月にルチオ・フルチは他界。急遽、特殊効果マンのセルジオ・ステバレッティが初メガホンを取ることになった。セルジオ・ステバレッティは、1953年3月15日ローマ生まれ。ダリオ・アルジェントの「インフェルノ」などで有名なメイク・アーティストのアンジェロ・マッティ、モウリツィオ・ガローネ、コルドーリ兄弟のもとで特殊メイクを学び、「デモンズ」で独立、ランベルト・バーヴァ、ダリオ・アルジェント、ミケーレ・ソアヴィ監督作品で第2班監督を務めている。特殊効果マンとしての作品に「フェノミナ」「オペラ座/血の喝采」「呪いの迷宮/ラビリンス・イン・ザ・ダーク(日本ではビデオ公開)」「アクエリアス」「バロン」「スタンダール・シンドローム」「デモンズ95」などがある。 |
ルチオ・フルチをアルジェントは15年近く絶交状態だった。これはアルジェントのちょっとした失言がもとになっている。アルジェントはフルチについ冗談で、フルチは自分の映画の物まねをしていると言ってしまったのだ。フルチは怒り出し、「君こそわたしの映画を真似しているじゃないか」と言い返してきた。アルジェントも「いや。あなたが僕の映画を真似している」と言い始め、けんかとなってしまった。それ以来、二人の絶交状態が続いた。 それから15年して、アルジェントはローマで開かれたファンタフェスティバルで車椅子に座った小柄な老人を見つけた。アルジェントは最初、その老人が誰だか判らなかった。それは老け込んで白髪となったフルチだった。その当時、フルチは体を病んでいてローマ郊外の朽ちかけた家に住んでいた。足を思い通りに動かすことができなかったが、彼には手術する資金がなかったらしい。
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「肉の蝋人形」では特殊効果の役割は重要だ。セルジオ・スティバレッティは「デモンズ3」や「デモンズ4」でも一緒に仕事をしたフランスの技術者と共同作業をした。スティバレッティにとって、肉の蝋人形の演出を手掛けたことは自分の方向性を変える良い機会になったようだ。イタリアでは監督としての地位が確立していないと何にせよ新しいことがやりにくいのだ。新しい企画を通すためには自力でそれをやり遂げるだけの力量が要求される。
ダリオ・アルジェントはアメリカで仕事をするのは難しいと語っている。それはセルジオ・スティバレッティにとっても同様だ。しかし、スティバレッティはアメリカでの仕事を希望している。アメリカにはスティバレッティと同じ仕事をしている人々がたくさんいるからだ。イタリアでは特殊効果の第一人者としての地位が確立しているスティバレッティ。当然、多くの仕事が彼に集中する。しかし、アメリカにいけばライバルが何人もいるはずだ。スタンダール・シンドロームの特殊効果を担当しているとき、アメリカの映画監督、ウイリアム・ラスティグから彼のもとへ特殊効果の依頼がきたが、スケジュールが折り合わず、結局、断らざるを得なかったという経験を持つ。スティバレッティは「いつか機会があればラスティグと仕事をしてみたい」と話している。 スティバレッティは特殊効果マンになる前、医学を学んでいた。もっとも、彼は医学には向いていなかったようだが、医学の知識は特殊効果にいかされている。どのように動けば本物のように見えるか、この動きは科学的に正しいか、といった点で医学の知識がいかされているのだ。 |
各映画ガイドにおける作品紹介を比較する。短いコメント文でも、筆者の見解が分かれるのは興味深い。 ホラーの逆襲の紹介文 ルチオ.フルチと共同で脚本を害き、フルチを監督に製作する予定だったが、フルチ急死のため、特殊効果担当のセルジオ・スティバレッティに監督を移行。ガストン・ルルーの短編小説「蟷人形館」が原作。アルジェントとフルチ、2人の過去の作品のエッセンスが随所に見られる。今世紀初頭を舞台にしたコスプレもの。次の『オペラ座』への布石か。 |
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