IL FANTASMA DELL'OPERA
オペラ座の怪人

Also Known As:Dario Argento's The Phantom of the Opera (1998) (UK: video title)、Phantom of the Opera (1999) (USA: video box title)。 The Phantom of the Opera(1999) (USA)

fantasma

1998 Color

 



[STAFF]

監督:ダリオ・アルジェント 
製作:メデューサ・フィルム、チネ2000、フォーカス・フィルム、レテイタリア
配給:メディーサ・ディストリビュージオーネ
製作総指揮:クラウディオ・アルジェント
制作:ジュゼッペ・コロンボ、アーロン・シポス 
原作:ガストン・ルルー
脚本:ダリオ・アルジェント、ジェラール・ブラシュ
撮影:ロニー・テイラー
音楽:エンリオ・モリコーネ
衣装 : アグネス・ギアーマシー
特殊効果 : セルジオ・スティヴァレッティ、ペーター・スジラーギ
特殊効果助手:デビッド・ブラッキ 
編集:アンナ・ナポリ 
美術:アントネッロ・ゲーリング、クサバ・ストーク
衣装デザイン:アニエス・ジャルマンシー
メイクアップ:キャサリン・ジャコッツ、バラズ・ノバック
制作主任:トマッソ・カレビ
助監督:アレッサンドロ・インジャジオーネ、ペーター・ラック
音響:ロベルト・アルベルジーニ 
マイク操作:クサバ・エロス
録音:ジョセフ・カルドス
怪人のスタント:ガボール・ピロッキ
音楽コンサルタント:チンツィア・カバリエリ
編集助手:エマニュエラ・ディ・ジュンタ、マリア・クリスティーナ・マッラ
アーシア・アルジェントのオペラ吹き替え:ラファエラ・ミラネシ
ステディカム操作:マルコ・ピエロニ

制作期間:1998年1月19日ー4月1日
撮影スタジオ:チネチット(ローマ)

時間:日本102分、イタリア106分、米国99分、ドイツ98分
公開日:フランス1999年2月3日、フィンランド1999年7月30日、シンガポール1999年8月26日、米国1999年11月9日(ビデオリリース)、スウェーデン1999年11月18日(ストックフォルム映画祭にて)、ポルトガル1999年11月19日、アイスランド2001年6月26日(ビデオリリース)

ロケ地:ブダペスト(ハンガリー)

撮影カメラ:パナビジョン社パナフレックスカメラ&レンズ
フィルムネガフォーマット:35mm
現像:スフェリカル
フィルムプリントフォーマット:35mm
画面比 1.85:1
ヴィスタ
ドルビーデジタル
日本語字幕:細川直子
日本配給:日本ヘラルド映画


[CAST]

怪人:ジュリアン・サンズ 
クリスティーヌ・ダーエ:アーシア・アルジェント 
ラウル・ド・シャニー男爵:アンドレア・ディ・ステファノ 
イグナス:イストヴァン・ブビック
オノリーヌ:コラリーナ・カタルディ・タッソーニ 
カルロッタ・アルティエリ:ナディア・リナルディ
イグナス:イストバン・ブビック
ポリニー:ゾルタン・バラバス 
ジリ夫人:ルチア・グッザルディ
プーデュー:アルド・マサッソ 
モンルック:ジャンニ・フランコ 
アルフレッド:ダヴィッド・ディンジオ
プーレット:キティー・ケリ
プランカルド博士:ジョン・ペデフェッリ
ジェローム・ド・シャグニー:レオナルド・トレヴィグリオ 
ブーケ:マッシモ・サルチェッリ
ニコロー:ルイス・モルテーニ
マルセル:エンゾ・カルドーナ
カルロッタの母親:イタラ・ベケス
エルミン:クラウディア・ケモネス
リザ:クシーラ・ワード
マーサ:レカ・ポズゲイ
エドガー・デガス:フェレン・デアック・B
チャールズ・ゴーノー:ロズソ・ルドビ
キキ:ベビッド・ドラッカー 
マルセル:エンゾ・カルドーニャ
マルク:ガボール・ハーサイ
ロンゲット:バラズ・タルディ
パピン:デネス・ウジラキィ
小人:サンドール・ベセ
マルタン:イヴァン・デンジェル
ポリドーリ:フェラン・ラトカイ
ローズ:ポドポリーナ・イローラ
友人:フリグネ・ハローシ
ファウスト:イストバン・スゾクジェイ
詩人1:スザボ・ベンテ・ロベール
詩人2:ゾルタン・ラジカイ
母親:タニア・ナジェール
父親:クレスポ・ロドリゴ
ワイタ−:ズソルト・アンガー
ロメロ:ズソルト・デレクスキー 
メフォスト:ティボー・ネメス
ピアニスト:ラズロ・ペソ、ダニエル・ズドロア、ベラ・ネメス


ストーリー

 1877年、パリのオペラ座。若きソプラノ歌手クリステイーヌ(アーシア・アルジェント)が無台でひとり稽古をしているのを、物陰から“幽霊”(ジュリアン・サンズ)が見つめている。彼は彼女の声と美貌にたちまち魅了される。“幽霊”の思いは彼女に届き、やがてふたりは舞台裏や楽屋で密かに会うようになる。オペラ座は“幽霊”の噂でもちきりである。ねずみ捕り主任は“目に見えないカ”のために怪我をし、地下へ向かった裏方のアルフレッドと恋人は失踪する。すべては地下の墓地に住む“幽霊”の仕業だった。



 ある日、クリスティーヌは“幽霊”の声に誘われ、地下の湖のほとりにある彼の住み家を防れる。激しい情熱に身をまかせるふたり。その後、劇場へ向かった“幽霊”は、クリスティーヌの出世のため、プリマドンナの舞台で大事故を超こす、,だがクリスティーヌはそんな彼に怖れを抱き、以前から彼女に好意を寄せていたラウル・ド・シャニー男爵(アンドレア・ディ・ステファノ)に助けを求める。







 その夜プリマドンナの代役で舞台に立ったクリステイーヌは、満場の観客の心を虜にしていた。だがその時ねずみ捕りが、彼女は“幽霊”の愛人だとなじる。呆然とする人々の前に現れた“幽霊”は、彼女を連れ去り、地下へ向かう。ラウルと武器を手にした警官たちが追う。やがて湖に追いつめられた“幽霊”は、クリスティーヌヘの愛を貫くため自らの命を犠牲にする

ポスター

アルジェントの建物はゆがんだ空間

 アルジェントが最初に見た映画はオペラ座の怪人だったという。オペラ座の怪人の主役はむろん、謎の人物 であるオペラ座の怪人だが、もう一人別の主役がいる。それはオペラ座の建物それ自体だ。ガストン・ルル ーの原作にはパリ、オペラ座の迷路のような空間が描かれている。オペラ座に謎の人物が巣くっているとい うイマジネーションには感嘆せざるを得ないが、ルルーの目にはオペラ座がそれほど魅力的な建築物と写ったのであろう。

 アルジェントで建物自体が主役を演じている作品にはサスペリアとインフェルノがある。迷路のように入り 組んだ廊下、過激な室内装飾、隠された秘密の部屋など、建物自体が重要な役割を果たす。特にインフェル ノはニューヨークの古いアパートこそが物語の中心であり、登場人物は重要な役割を果たしていない。ロー マの古文書図書館にも地下には錬金術師の部屋があるなど、建物は現実感のない悪夢であるかのように描かれる。アルジェントのオペラ座の怪人は建物を描いているという点でサスペリア、インフェルノと同系統の作品に属するといえるのかもしれない。アルジェントの描く建物は閉鎖された空間ではなく、そこからの脱出が主題ではないが、一種のゆがんだ空間を我々に提示する。 

不可能な愛の物語

 「闇の世界でしか生きられない怪人。陽の当たる場所でしか輝くことのできない歌手。ふたりの結末には別れしかなかった」――。『オペラ座の怪人』はダリオ・アルジェント監督のファンにとっては踏み絵となるだろう。監督14作目となる本作には彼独特の映像美学や華麗な殺人描写がほとんど存在しないからだ。はじめて観た映画がアーサー・ルービン監督の『オペラの怪人』というアルジェント。この映画で彼が描くのはパリ、オペラ座の地下に巣食う怪人と新人歌手クリスチーヌの不可能な愛の物語。『オペラ座の怪人』はアルジェントがあえて自分のトレードマークである華麗な映像を脱ぎ捨て、オーソドックスな演出に徹した意欲作である。《アルジェント=ホラー映画の鬼才》という思い込みはこの際捨てて、このイタリアの鬼才の描くラブストーリーに酔いしれたい。

 アルジェントはガストン・ルルーの原作を大胆に脚色。怪人から仮面を剥ぎ取った。当初、ジョン・マルコヴィッチの予定だった怪人役は『裸のランチ』のジュリアン・サンズが好演。彼の代表作の1本になるだろう。怪人は美貌の持ち主であり、怪人とクリスチーヌの関係はプラトニックな愛で包まれている。ねずみに育てられた怪人が超能力を持っているという設定も目新しい。

 クリスチーヌを演じるのはダリオの娘、アーシア・アルジェント。『トラウマ 鮮血の叫び』、『スタンダール・シンドローム』に続き、父親の映画に主演する。今まで映画化された『オペラ座の怪人』のなかで最も艶めかしいクリスチーヌだ。共同脚本はロマン・ポランスキーの『反撥』や『テス』で有名なジェラール・ブラシュ。撮影は『ガンジー』でアカデミー賞を受賞、アルジェントとは『オペラ座 血の喝采』でも組んだロニー・テイラー。音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ。超一流のスタッフが結集した。まったく新しい『オペラ座の怪人』の登場である。

 『オペラ座の怪人』はプロデューサーのクラウディオ・アルジェントが「街灯がある以外はほとんど当時と変わらない町」と絶賛するハンガリーのブダペストがロケ地。1877年当時のオペラ座の描写はアルジェント演出の独擅場である。

 この映画の主役はむろん、怪人とクリスチーヌだが、もう一人別の主役がいる。それはオペラ座の建物それ自体だ。建物を描いたアルジェント作品には魔女にまつわる恐怖を描いた『サスペリア』と『インフェルノ』がある。これらの作品は迷路のように入り組んだ廊下、過激な室内装飾、隠された秘密の部屋など、建物が重要な役割を果たしている。アルジェントの描く建物は一種のゆがんだ空間だ。本作はオペラ座という呪われた空間から光の当たる場所への脱出を描いているという点で『サスペリア』『インフェルノ』と同系統の作品ともいえるだろう。だが、ダリオ・アルジェントが愛を正面からテーマにしたのはこの映画が初めてである。ラストのアーシア・アルジェントの叫びが心を打つ。 

ヒエロニムス・ボッシュの『快楽の園』

 劇中で登場するねずみ取りには、オランダの画家、ヒエロニムス・ボッシュ(1450-1516)の『快楽の園』に描かれた怪物が掛かっている。アルジェントは「わたしの映画に登場する絵画は、自分自身が興味を持っている作家の作品だ」と話している。犯人にトラウマを呼び起こす「歓びの毒牙」の絵画、重要なポイントとなる「サスペリア2」の壁に塗り込められた絵、そして美術館が舞台となる「スタンダール・シンドローム」など、アルジェントの映画では絵画が重要な役割を果たす。(左の絵はボッシュの『快楽の園』)

各映画ガイドによるストーリー紹介

 各映画ガイドにおける作品紹介を比較する。短いコメント文でも、筆者の見解が分かれるのは興味深い。

ホラーの逆襲の紹介文 

 アーシアをクリスチーヌ役に、ジュリアン・サンズを怪人役に描くアルジェント流『オペラ座の怪人』。アルジェントは、怪人からマスクをはぎとり、若く美しい怪人像を打ち出した。ねずみの王としてオペラ座の奈落に君臨している怪人は、残酷な仕打ちを人間にする反面、ロリコンおやじから少女を守ったりする善の面も持ち合わせていたりする。クリスチーヌと怪人がテレパシーで話したり、ねずみが人間の子を育てたり、ねずみ捕りにボッシュの絵に描かれた怪物が掛かっていたりする。ホラーというより、ダークファンタジーといったノリ。原作にはないクリスチーヌと怪人の大胆なベッドシーンも披露。

ニフティ・サーブの紹介文

 “これはサスペンスと音楽とヴィヴィッドな色彩とゴシック建築から成るモザイクだ。それを創りあげるのは、フィルムメーカーとしての私のキャリアの中で最大のチャレンジである”-ダリオ・アルジェント

パリのオペラ座に出没する謎の“怪人”と美しい歌姫とのかなわぬ恋。ガストン・ルルーが1911年に発表した「オペラ座の怪人」は、これまでもミュージカルや映画に何度も翻訳され、世界中で多くの人々に親しまれてきた永遠の傑作です。

 今回この世紀の名作の映画化に挑んだのは、イタリアのサスペンス&ホラーの名匠として高い人気を跨るダリオ・アルジェント。『サスペリア』シリーズや『シャドー』などで世界中の映画ファンを魅了した、あの美意識あふれる独自の映像感覚によって、血と官能の芳香が与えられたアルジェント版「オペラ座の怪人」は、これまでのどのヴァージョンよりも独創的なものに仕上がっています。

 殺人鬼の顔をあわせ持つ美貌の持ち主という新解釈の“怪人”をロマンティックに演じるのは『眺めのいい部屋』『裸のランチ』の二枚目国際派スター、ジュリアン・サンズ。クリスティーヌ役には監督の実娘アーシア・アルジェント。『トラウマ/鮮血の叫び』『スタンダールシンドローム』に次いで父の監督作のヒロインを務めます。スタッフには『ガンジー』でアカデミー賞を受賞した撮影監督ロニー・テイラー、『ニュー・シネマ・パラダイス』の作曲家エンリオ・モリコーネら、超一流の才能が結集し、デカダンでグロテスクな世紀末パリを背景とするゴシック・ロマンスの創出に貢献しています。

 

 


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