IL FANTASMA DELL'OPERA
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制作期間:1998年1月19日ー4月1日 時間:日本102分、イタリア106分、米国99分、ドイツ98分 ロケ地:ブダペスト(ハンガリー) 撮影カメラ:パナビジョン社パナフレックスカメラ&レンズ |
怪人:ジュリアン・サンズ |
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「闇の世界でしか生きられない怪人。陽の当たる場所でしか輝くことのできない歌手。ふたりの結末には別れしかなかった」――。『オペラ座の怪人』はダリオ・アルジェント監督のファンにとっては踏み絵となるだろう。監督14作目となる本作には彼独特の映像美学や華麗な殺人描写がほとんど存在しないからだ。はじめて観た映画がアーサー・ルービン監督の『オペラの怪人』というアルジェント。この映画で彼が描くのはパリ、オペラ座の地下に巣食う怪人と新人歌手クリスチーヌの不可能な愛の物語。『オペラ座の怪人』はアルジェントがあえて自分のトレードマークである華麗な映像を脱ぎ捨て、オーソドックスな演出に徹した意欲作である。《アルジェント=ホラー映画の鬼才》という思い込みはこの際捨てて、このイタリアの鬼才の描くラブストーリーに酔いしれたい。 アルジェントはガストン・ルルーの原作を大胆に脚色。怪人から仮面を剥ぎ取った。当初、ジョン・マルコヴィッチの予定だった怪人役は『裸のランチ』のジュリアン・サンズが好演。彼の代表作の1本になるだろう。怪人は美貌の持ち主であり、怪人とクリスチーヌの関係はプラトニックな愛で包まれている。ねずみに育てられた怪人が超能力を持っているという設定も目新しい。 クリスチーヌを演じるのはダリオの娘、アーシア・アルジェント。『トラウマ 鮮血の叫び』、『スタンダール・シンドローム』に続き、父親の映画に主演する。今まで映画化された『オペラ座の怪人』のなかで最も艶めかしいクリスチーヌだ。共同脚本はロマン・ポランスキーの『反撥』や『テス』で有名なジェラール・ブラシュ。撮影は『ガンジー』でアカデミー賞を受賞、アルジェントとは『オペラ座 血の喝采』でも組んだロニー・テイラー。音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ。超一流のスタッフが結集した。まったく新しい『オペラ座の怪人』の登場である。 『オペラ座の怪人』はプロデューサーのクラウディオ・アルジェントが「街灯がある以外はほとんど当時と変わらない町」と絶賛するハンガリーのブダペストがロケ地。1877年当時のオペラ座の描写はアルジェント演出の独擅場である。 この映画の主役はむろん、怪人とクリスチーヌだが、もう一人別の主役がいる。それはオペラ座の建物それ自体だ。建物を描いたアルジェント作品には魔女にまつわる恐怖を描いた『サスペリア』と『インフェルノ』がある。これらの作品は迷路のように入り組んだ廊下、過激な室内装飾、隠された秘密の部屋など、建物が重要な役割を果たしている。アルジェントの描く建物は一種のゆがんだ空間だ。本作はオペラ座という呪われた空間から光の当たる場所への脱出を描いているという点で『サスペリア』『インフェルノ』と同系統の作品ともいえるだろう。だが、ダリオ・アルジェントが愛を正面からテーマにしたのはこの映画が初めてである。ラストのアーシア・アルジェントの叫びが心を打つ。 |
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各映画ガイドにおける作品紹介を比較する。短いコメント文でも、筆者の見解が分かれるのは興味深い。 ホラーの逆襲の紹介文 アーシアをクリスチーヌ役に、ジュリアン・サンズを怪人役に描くアルジェント流『オペラ座の怪人』。アルジェントは、怪人からマスクをはぎとり、若く美しい怪人像を打ち出した。ねずみの王としてオペラ座の奈落に君臨している怪人は、残酷な仕打ちを人間にする反面、ロリコンおやじから少女を守ったりする善の面も持ち合わせていたりする。クリスチーヌと怪人がテレパシーで話したり、ねずみが人間の子を育てたり、ねずみ捕りにボッシュの絵に描かれた怪物が掛かっていたりする。ホラーというより、ダークファンタジーといったノリ。原作にはないクリスチーヌと怪人の大胆なベッドシーンも披露。 パリのオペラ座に出没する謎の“怪人”と美しい歌姫とのかなわぬ恋。ガストン・ルルーが1911年に発表した「オペラ座の怪人」は、これまでもミュージカルや映画に何度も翻訳され、世界中で多くの人々に親しまれてきた永遠の傑作です。 今回この世紀の名作の映画化に挑んだのは、イタリアのサスペンス&ホラーの名匠として高い人気を跨るダリオ・アルジェント。『サスペリア』シリーズや『シャドー』などで世界中の映画ファンを魅了した、あの美意識あふれる独自の映像感覚によって、血と官能の芳香が与えられたアルジェント版「オペラ座の怪人」は、これまでのどのヴァージョンよりも独創的なものに仕上がっています。 殺人鬼の顔をあわせ持つ美貌の持ち主という新解釈の“怪人”をロマンティックに演じるのは『眺めのいい部屋』『裸のランチ』の二枚目国際派スター、ジュリアン・サンズ。クリスティーヌ役には監督の実娘アーシア・アルジェント。『トラウマ/鮮血の叫び』『スタンダールシンドローム』に次いで父の監督作のヒロインを務めます。スタッフには『ガンジー』でアカデミー賞を受賞した撮影監督ロニー・テイラー、『ニュー・シネマ・パラダイス』の作曲家エンリオ・モリコーネら、超一流の才能が結集し、デカダンでグロテスクな世紀末パリを背景とするゴシック・ロマンスの創出に貢献しています。 |
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