INFERNO
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1980 Color (Technicolor) |
監督 : ダリオ・アルジェント |
マーク・エリオット : リー・マクロスキー |
録音:ドルビー・ステレオ ロケ地:米国ニュ−ヨーク市、イタリア・ローマ 日本語版監修:岡枝慎二 配給関連:オーストラリア(ビデオ配給:Palace)、フランス(劇場配給: 20世紀フォックス、ビデオ配給:CBS/Fox)。ドイツ(劇場配給:20世紀フォックス、ビデオ配給:CBS/Fox)、ギリシア(ビデオ配給:Home Video Hellas)、イタリア(劇場配給:20世紀フォックス・イタリア、ビデオ配給: Domovideo-CBS/Fox;Club del Video)、オランダ(ビデオ配給:CBS/Fox)、スウェーデン(ビデオ配給: Media Transfer)。英国(劇場配給: Cinecenta、ビデオ配給: Fox Video、レーザーディスク:Encore)、米国(劇場配給: 20世紀フォックス、ビデオ配給: CBS/Fox、DVD配給: Anchor Bay) キネマ旬報掲載:紹介795号、批評796号、グラビア793号 |
ニューヨーク、4月。若い女流詩人のローズ・エリオットは、自分が住んでいる古いゴシック風のアパートに強い興味を持っていた。たまたま近くの骨董屋で買った本「3人の母」という本にその建物を指すと思われる記述があったからである。
翌日、意識を取り戻したマークは、再びローズの行方を探し始めた。そして、骨董屋のカザニアンを訪ねた。しかし、カザニアンからは何も情報を得られなかった。 |
アルジェントが制作に関与した『ゾンビ』の撮影が終わり、監督のジョージ・ロメロがピッツバーグで『ゾンビ』の編集を行っている間、アルジェントは2カ月ほどニューヨークに滞在していた。史上最悪の天候となった冬のニューヨークで、アルジェントは大雪のために外出もできず、仕方なく毎日、窓からセントラルパークを眺めていた。そうするうち、アルジェントは次第に「暗闇の母」に関する物語のイメージを固めていった。アルジェントは次回の監督作を『サスぺリア』と似たタッチの映画にしようと決めた。1年半を費やした企画は、20世紀フォックスからの資本を得て、300万ドルの予算を投入することになった。 |
リー・マクロスキ−とアイリーン・ミラクルが演じた主人公の姉ローズと弟マークは、ヘンゼルとグレーテルの変型である。ただ、彼らが閉じ込められるのはお菓子の家ではなく、悪魔の仕掛けた迷宮だ。映画のなかでローズは骨董屋のカザニアンの店を訪れ、館の周囲から「奇妙な甘いにおいがする」と相談する。これはローズの住むグラディエフ館がお菓子の家を象徴していることを示していると解釈できる。『インフェルノ』では、あり得ないような絵空事を真実として信じ込むような子供の視点、子供の持つ純粋さや単純さが映画のカギとなっている。 ローズがニューヨークで住む部屋はアパートの4階のエレベーターを降りて左、サラがローマで住む部屋もアパートの4階のエレベーターを降りて左である。また、ニューヨークのグラディエフ館の住所は49番地、ローマの古文書図書館もバニ49番地である。 |
ダリア・ニコロディは、『サスぺリア』では主役の座を追われたが、同じような経験をしたくなかったので、『インフェルノ』では脚本は自分で書きたいと思っていた。魔女シリーズはもともとダリア・ニコロディのアイデアが元になっており、どんなことがあっても脚本を書きたいと周囲に主張した。だが、脚本はダリオ・アルジェントが書くことになり、ダリア・ニコロディの書いた部分で最終的に映像になったのはエンディングと秘密の通路のくだりだけだった。 |
『インフェルノ』は欧州の多くの国々でヒットを記録した。ただ、米国では劇場公開されず、英国ロンドンではほとんど宣伝もされないまま、2週間で打ち切りとなった。 『インフェルノ』の撮影はアルジェントを悩ませ続けた。毎日のように出演希望の俳優たちやフォックスの人々から回ってくるたくさんのメモはトラブルを何度も引き起こし、アルジェントはまるで「ロシアの収容所に監禁された気分だった」という。 『インフェルノ』を撮影している最中のことだった。製作会社の20世紀フォックスで経営陣の交代があり、新しい経営陣は、旧経営陣の手掛けた映画をすべて排斥することにした。そのなかには『インフェルノ』も当然含まれ、『インフェルノ』は米国で公開されることはなく、お蔵入りとなったのである。アルジェントらがフォックスから権利を買い戻そうとしたほか、他の映画会社も権利の購入をフォックスに打診したが、フォックスは『インフェルノ』の権利を売却することはなかった。 |
日本で発売されているFOXのビデオはテレビサイズにトリミングされているが、ノーカットである。イギリスで発売されたPAL方式のLDはワイドスクリーンだが、猫がねずみを食べているシーンがカットされている。WOWOWで放映されたバージョンはノーカットでワイドスクリーン版。TBS系でのテレビ初放映時には、残虐描写が大幅にカットされた。その後、テレビ東京系列で放映されたバージョンはノーカットだったものの、女性の首つりのイメージカットは図書館の裏口のシーンに入れ替えられていた。 |
アルジェントは『インフェルノ』を撮影中の1980年に作家のスティーブン・キングと話し合いをもったことがある、キングのエージェントからアルジェントに連絡があり、時間を調整した。アルジェントはその当時、キングがどういう人物かをよく知らなかったが、キングの本を読んだことはあり、良い小説だと感じていた。キングはサスぺリアが大好きだと話し、自分の小説のどれかを映画化するつもりはないか、とたずねた。キングは自分の小説3本を挙げ、アルジェントによる映画化を希望した。だが、アルジェントは結局、映画化の話しを断った。その当時、アルジェントは自分のアイデアを実現させることに夢中になっており、原作ものを手掛ける余裕はなかったからだ。 |
井口健二氏はキネマ旬報796号158ページで、インフェルノについて、「結果は期待はずれだった。簡単にいってしまえば、仕掛けが大きくなってしまった分だけ恐怖感が稀薄になってしまったのだ」と評している。 |
各映画ガイドにおける作品紹介を比較する。短いコメント文でも、筆者の見解が分かれるのは興味深い。 ホラーの逆襲の紹介文 「サスペリア」の続編的作品だが、魔女を描いたというだけでストーリー上のつながりはなし。ベルディのオペラ『ナブッコ』から、合唱「行け、思いよ、黄金の翼に乗って」を効果的に使い、荘厳な恐怖を演出。キース・エマーソンのソロ・デビューとなったサントラ・アルバムも話題になった。意味不明場画があり、難解と評されるが、そこがまた魅力。 ぴあシネマクラブの紹介文 イタリア・ホラーの奇才アルジェントがアメリカで撮った作品。『三人の母』なる魔女について書かれた本にまつわる連続殺人事件を描いたショッカーだ。猫が人間を食いちぎったり、何100匹ものネズミに殺される老人など、アルジェントお得意の残酷描写が見もの。 失踪した建築家が書き記した古書“三人の母”をめぐってローマからニューヨークに展開する奇怪な殺人。現代の大都会に存在する魔女の館という設定もそこそこに、相も変わらず行き当たりばったりに展開されるショック・シーンや、脈絡なく描かれる登場人物たちなどアルジェントの持ち味が全くの裏目に出た怪作。キース・エマーソンの音楽が強烈な印象を残す。 |
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